パタプラ口語表現を作ったきっかけ
英語ネイティブとのコミュニケーションで苦労する大きな原因の一つは、実は基本的な口語表現を知らないこと。TOEICで高得点を取るとつい安心してしまいがちですが、語彙学習は継続していく必要があります。
そこで、どのビジネス分野であっても汎用性の高い口語表現を精選した教材を作りました。
元大手英会話スクールの教務主任、教材開発。在米35年、現在もニューヨーク在住。早稲田大学第一文学部中退、英検1級、TOEIC985点。英会話の講師とニューヨークでの日系商社での勤務経験から、日本人ビジネスパーソンを対象にした実用的な英語教材を開発。
教材開発者 松尾 光治
ネイティブとのコミュニケーションで苦労する原因の一つが、基本的な口語表現を知らないことです。
文書で出会う未知の語彙はその場で意味を調べられますが、会話を通して耳からインプットする口語表現はそうはいきません。相手に意味を確かめない限り、そのまま聞き流して終わりです。
実際、アメリカに駐在中の複数のお客様から「会議で出てきた単語の組み合わせの意味が分からない」「ビジネスシーンで使う口語表現をどう学べばいいか分からない」といった相談を受けました。
そこで、TOEICなどの試験対策では出てこない、実際のビジネスシーンで頻出する口語表現を厳選した教材を作ることを考えました。
構想から開発まで
口語表現にあたる句動詞・慣用表現・イディオムは、ネイティブが幼児〜小学生の期間に覚える単語の組み合わせです。日本の英語教育やTOEICではほとんど取り上げないため、英語上級者であっても知らない表現がたくさんあります。
- 英語ネイティブがビジネスで頻繁に使う口語表現を聞いて理解できるようになること
- お気に入りの表現を見つけて、自分でも使えるようになること
- どこか堅くて不自然な文体ではない、より自然な英文で話せるようになること
これらを実現できる教材を目指し、開発を始めました。また、教材音声は実際にビジネス経験の豊富であるネイティブによって制作することにもこだわりました。
2500語の候補から400語に厳選
口語表現の教材を作るにあたり非常に難しいのが、どの表現を選出するかです。流行りの表現や少し洒落た表現は数年で古くなる可能性も大きいので、そういった点も考慮が必要です。
まず英語圏で出版されているビジネス英語教材と私が長年つけている語彙ノートから、2500語の候補をピックアップしました。その候補から使用頻度の高い表現、日本人が知っておくと重宝する表現を400語まで厳選しました。
私自身が米国でビジネスパーソンとして働いた経験、多くの駐在員にビジネス英語を教えてきた経験、そして長年に渡って英米のさまざまな雑誌、新聞、オンラインコラムや書籍、動画から気になる文や語彙を集めてきたからこそ作ることができた表現集が、このパタプラ口語表現になります。
パワーリピーティングを開発
教材作成で一番悩んだのは、記憶への定着を確認する方法です。それも実際の会話シーン同様に、音声のみで取り組める構成にする必要があります。
人間の脳の記憶システムから、実際に語彙を使えるようになるには、覚えたものを潜在記憶(手続き記憶)に落とし込み、技能に転化するまで繰り返し練習するしかありません。頭で学ぶ「勉強」ではなく、体で覚えていくスポーツの「練習」と同じです。
そのため、例文の音声を何度も口に出すことで語彙を覚える学習方法自体には迷いはありませんでした。問題は「例文を体で覚えているか」のチェック方法です。
頭の中で日本語と英語が混ざると効果的なトレーニングになりません。脳を英語モードに保つために、英語だけで練習する必要があります。
日本語訳を使って定着をチェックする方法では、脳が一瞬日本語モードに切り替わってしまいます。そこで、英文の文頭を音声で流し、その後に全文が口から出てくるかでチェックする方法にしました。この英語モードに保ったまま、スピーキング練習から定着の確認までできる方法を「パワーリピーティング」と名付けました。
1年の時間をかけて開発
「TOEICレベルの語彙を習得したビジネスパーソンが、業務関連の語彙以外にもさらに語彙を学ぶとしたら何を優先すべきか?」というのは重要な課題です。
パタプラ口語表現は、TOEICでは学べない、実際にはビジネスシーンで頻出する口語表現を自由自在に使いこなすことで、コミュニケーションの質をアップさせるための教材です。
教材を通して学習者の皆さんが理解力と自己表現力を大きく向上させ、ネイティブとのビジネスシーンでも本来の実力を発揮できることを願っています。